かんたんな答え
認知症のある方が「家に帰りたい」と言い続けるとき、「家」は建物ではなく、安心できる気持ちや昔の暮らしの場所を指していることがよくあります。「ここが家ですよ」と言い返すのはやめましょう。気持ちを受け止め、安全だと伝え、家のことを尋ねてから、写真や音楽、おやつ、散歩、かんたんな作業へそっと移ります。空腹、のどの渇き、トイレ、痛みも確かめましょう。急に始まった場合は、かかりつけ医に連絡してください。
- 「家に帰りたい」は、住所を求める言葉ではなく、「安心できない、落ち着かない」という気持ちであることがよくあります。
- 言い争ったり、ここが家だと証明したりすると、つらさが増しがちです。言葉より気持ちに応えましょう。
- 家のことを話してもらい、写真、音楽、おやつ、散歩、かんたんな作業を勧めてみましょう。
- 空腹、のどの渇き、トイレ、痛み、暑さ寒さ、騒音、疲れなど、解決できることがないか確かめましょう。
- 毎日夕方に起こるなら夕暮れ症候群かもしれません。決まった日課と明るい照明が助けになることがあります。
- 外へ出ようとする場合に備えて安全の準備をし、急な変化があればかかりつけ医に連絡しましょう。
このページの内容(9項目)
「家に帰りたい」。ご本人が自宅のリビングに座っているときに言われると、ご家族にとっては、聞くのがとてもつらい言葉のひとつです。これはよくあることで、認知症のどの段階でも起こりえますし、落ち着いて対応するための現実的な方法があります。このページでは、その言葉がよく意味していること、かける言葉、その場で役立つ活動、安全の守り方を紹介します。
認知症の方はなぜ「家に帰りたい」と言い続けるのでしょうか?
多くの場合、「家」は場所というより気持ちです。英国アルツハイマー協会は、家そのものではなく、心地よさや安心感、あるいは昔の家を指していると説明しています。認知症になると、なじみのある部屋が見慣れないものに見えたり、家が子どものころの家や子育てをした場所だった昔の時期にいるように感じたりすることがあります。
この言葉は、今ほかに困っていることのサインのこともあります。おなかがすいた、のどが渇いた、トイレに行きたい、痛い、暑い、寒い、疲れた、寂しい、怖い、音が多すぎてつらい、などです。米国国立老化研究所は、興奮や落ち着かなさの原因として、痛み、騒音、孤独、日課の変化、薬を挙げています。
「家に帰りたい」と言われたら、何と言えばいいですか?
言葉ではなく、気持ちに応えましょう。米国家族介護者連盟は、ご本人が間違っていると説得しようとしないよう勧めています。気持ちは本物なので、まず安心の言葉で応え、それからそっと気持ちを切り替えましょう。
よく役立つ言葉かけ:
- 気持ちに名前をつける。「お家が恋しくなっているのですね」。
- 安心させる。「ここは安全ですよ。ずっとそばにいますね」。米国アルツハイマー病協会は、「ここは安全ですよ」というシンプルな言葉を勧めています。
- 思い出を引き出す。「お家のこと、聞かせてください。台所はどんな感じでしたか?」。ずっと昔のことを尋ねるほうが、今日のことを尋ねるより心地よいことが多いものです。
- いっしょにできることを提案する。「まずお茶を一杯飲みましょうか」「このタオルをたたむのを手伝ってもらえますか?」。
あたたかい声のトーンや、ふれられるのが好きな方なら腕にそっと手を添えることが、言葉以上に伝わることもあります。
避けたほうがよいことは?
- 言い争いや説明。「もうここに住んでいるのですよ」「ここは40年前からお家ですよ」と言うことは、認知症のために受け入れにくいことを受け入れるよう求めることになり、間違いを指摘されたと感じさせてしまうことがあります。
- 問いただすこと。「覚えていないのですか?」「住所は?」と聞くと、プレッシャーが増します。
- 怒ってドアをふさぐこと。 外へ出ようとしたら、落ち着いて、いっしょに歩きましょう。短い散歩で気持ちが落ち着くことがよくあります。
- 急かすこと。 話題を変える前に、家のことを話す時間を十分にとりましょう。
その場で役立つ活動
気持ちを受け止めたあとで、落ち着いたなじみのある活動をすると、その気持ちを否定せずに注意をほかへ向けられます。
- 家や家族の写真を見る。 ページをめくりながら、質問するのではなく、感想を添えましょう(「きれいなお庭ですね」)。スマートフォンやタブレットでは、写真合わせでご家族の写真をやさしい神経衰弱のようなゲームにでき、写真は端末の中にとどまります。
- 家の話をする。会話カードには、家、台所、近所の人、お祝い事についての、正解のない問いかけがあります。
- 好きな音楽を流す。 米国国立老化研究所は、気持ちを落ち着ける方法のひとつにやすらぐ音楽を挙げています。音楽のレクリエーションもご覧ください。
- おやつや飲み物をとる。 空腹やのどの渇きは、落ち着かなさのように見えることがあります。お茶や好物のおやつは、家にいるという小さな習慣にもなります。
- 散歩する、外で座る。 体を動かすことと日光は、特に日中の早い時間に助けになります。
- なじみのある役割をお願いする。 洗濯物をたたむ、スプーンやフォークを仕分ける、植物に水をやる。家を切り盛りしていた感覚がよみがえることがあります。
- すべてをゆっくりにする。 テレビを消し、音とまぶしさを減らし、いっしょにゆったり呼吸のひとときをとってみましょう。
ひとつの案がうまくいかなくても、あとでほかの案を試してみましょう。静かにいっしょに座っているのも、良い結果のひとつです。
解決できる原因がないか確かめる
| 確かめること | 試してみること |
|---|---|
| 空腹・のどの渇き | 飲み物と軽いおやつを勧める |
| トイレ | 騒ぎ立てず、落ち着いてトイレを勧める |
| 痛み・不快感 | 顔をしかめる、体のどこかをかばう、便秘などのサインを探し、かかりつけ医に伝える |
| 暑い・寒い | 衣類の枚数や室温を調整する |
| 騒音・人の多さ | 静かな部屋に移り、テレビを消す |
| 疲れ・刺激の多さ | 休んでもらい、部屋を少し暗くし、静かな音楽を流す |
| 夕方 | 下の夕暮れ症候群の項を見る |
英国アルツハイマー協会は、「帰りたい」と言い出すのが食事の前、来客のあと、夕暮れ時など、いつなのかを短く記録することを勧めています。パターンがわかると、先回りして備えやすくなります。
やさしいうそをついてもいいのでしょうか?
これは実際に意見が分かれる問題で、思いやりのある家族でも結論はさまざまです。英国アルツハイマー協会は、唯一の正解はないとしています。うそによってかえって疑い深くなる方もいるため、ご本人にとって何がいちばんよいかを考え、一貫した態度をとるよう勧めています。ペン記憶センターの共同ディレクターは、真実を伝えることを基本とし、やさしいうそは、ご本人がある真実をどうしても受け止められないときに限って許されるもので、ご本人の現実感をばかにしてはいけないという考えです。
多くの介護者は、中間の道がうまくいくと感じています。家がどこかで言い争わず、まずは正直な安心の言葉と気持ちの切り替えから始めるのです(「今夜はここにいましょうね。私はすぐそばにいますよ」)。
毎日午後や夕方に起こる場合は?
午後遅くに始まったり悪化したりする落ち着かなさは、夕暮れ症候群と呼ばれることがよくあります。米国国立老化研究所は、決まった日課、毎日の日光と活動、夕方の昼寝を減らすこと、夕方以降のカフェインやアルコールを避けることを勧めています。暗くなる前に照明をつけるのも助けになります。夕方の落ち着いた過ごし方のガイドもご覧ください。
外へ出ようとしたときの安全の守り方
「家に帰りたい」という訴えは、ひとりで外へ出てしまうことにつながる場合があります。米国アルツハイマー病協会は、認知症のある方の10人に6人が、少なくとも一度は歩き回ると推計しています。
前もって備える:
- 名前とあなたの電話番号を記した身元がわかるもの(ブレスレットなど)と、衣類へのお名前ラベル。米国国立老化研究所は、米国の例として、MedicAlert と米国アルツハイマー病協会の Safe and Found プログラムを挙げています(費用がかかる場合があります)。日本でも、お住まいの自治体に、行方不明を防ぐ見守りや捜索の仕組みがある場合があります。地域包括支援センターに尋ねてみましょう。
- ドアチャイムやアラーム、高い位置や低い位置に付ける鍵。ご本人を中に閉じ込めたまま、ひとりにすることは決してしないでください。
- 最近撮った顔のアップの写真と、行きそうな場所(昔の自宅や職場など)のリスト。
- 信頼できる近所の人に伝え、あなたの連絡先を渡しておく。
行方がわからなくなったら: すぐに探し始めましょう。米国アルツハイマー病協会は、多くの方が1.5マイル(約2.4km)以内で見つかると述べています。15分たっても見つからなければ、認知症のある方だと伝えて警察(110番)に連絡してください。命や安全に危険がある場合は、すぐに110番または119番に連絡してください。
いつ医師に連絡すればいいですか?
「帰りたい」という訴えや混乱が急に始まったとき、数時間から数日のうちに大きく悪化したときは、すぐにかかりつけ医に連絡しましょう。米国国立老化研究所は、特に感染症のあとや薬が変わったあとに、急な、あるいは急速に変わる行動の変化があれば、すぐに確認を受けるべきだとしています。急な混乱はせん妄の可能性があり、NHSは早急な対応が必要だとしています。高齢の方では、尿路感染症がよくある原因です。
また、痛み、気分の落ち込み、睡眠の問題、薬の副作用がすべて関わっている場合もあるため、決まったパターンがあれば、次の受診のときに伝えておくと役立ちます。
よくある質問
認知症の母は、家にいるのに「家に帰りたい」と言い続けます。なぜですか?
認知症になると、なじみのある部屋が見知らぬ場所に感じられたり、人生の昔の時期にいるように感じられたりすることがあります。「家」は子どものころの家のこともあれば、安全で心地よいという感覚そのもののこともあります。今いる場所を指摘するより、その気持ちに応えるほうがうまくいくことが多いです。
「家に帰りたい」と言われたら、何と言えばいいですか?
「ここは安全ですよ。ずっとそばにいますね」と伝え、続けて「お家のこと、聞かせてください」と尋ねてみましょう。耳を傾け、写真や歌を分かち合い、飲み物や短い散歩を勧めます。「ここがお家ですよ」と訂正するように言うのは避けましょう。間違いを指摘されたように感じさせてしまうことがあります。
「あとで帰りましょうね」と言ってもいいのでしょうか?
家族や認知症の団体の間でも意見は分かれています。まずは正直な安心の言葉と気持ちの切り替えから始め、本当のことを伝えてもご本人が受け止めきれず、つらさが増すだけのときに限って、やさしいうそを使うという人が多いようです。どの方法を選ぶにしても、やさしく、一貫した態度で接し、ご本人の現実感をばかにしないでください。
家から出ようとしたらどうすればいいですか?
落ち着いて、行く手をふさぐのではなく、いっしょに歩きましょう。短い散歩で外へ出たい気持ちが落ち着くことがよくあります。名前入りの身元がわかるもの、ドアチャイム、最近の写真など、安全のための備えを前もってしておきましょう。行方がわからなくなったらすぐに探し始め、15分たっても見つからなければ、認知症のある方だと伝えて警察(110番)に連絡してください。
いつ医師に連絡すればいいですか?
「帰りたい」という訴えや混乱が急に始まったとき、数時間から数日のうちに大きく悪化したときは、すぐにかかりつけ医に連絡しましょう。特に、発熱、新しい薬、尿路感染症のような症状があるときは注意が必要です。急な混乱はせん妄の可能性があり、早急な対応が必要です。命や安全に危険があるときは、119番に連絡してください。
出典
このページの根拠となる団体や研究へのリンクを掲載しています。いずれもページを更新した時点で確認しています。
- 'I want to go home' - What to say to someone with dementia in care · Alzheimer's Society
- Difficult questions and telling the truth to a person with dementia · Alzheimer's Society
- Caregiver's Guide to Understanding Dementia Behaviors · Family Caregiver Alliance
- Wandering · Alzheimer's Association
- Anxiety & Agitation · Alzheimer's Association
- Coping With Alzheimer's Behaviors: Wandering and Getting Lost · National Institute on Aging
- Coping With Agitation, Aggression, and Sundowning in Alzheimer's Disease · National Institute on Aging
- Alzheimer's Caregiving: Managing Personality and Behavior Changes · National Institute on Aging
- Sudden confusion (delirium) · NHS
- When is it OK to tell a white lie to someone living with Alzheimer's disease? · Penn Memory Center